「まちがえ読み」で集中させる
浅川 清(TOSS相模原)
特に低学年には大うけの音読方法である。
まず、次のように話す。
今から先生が「たんぽぽ」を読んでいきます。先生が読んだところを、みんなも読みなさい。ただし先生は、わざとまちがえて読みます。みんなは引っかかってはいけません。いいですね。
「はーい。」
「大丈夫だもん。引っかからないもんね。」
などと、子ども達は言う。
教師は、すました顔で読み始める。
「たんぼ」
いきなり題名からまちがえてみせる。
「ちがうよ。『たんぽぽ』だよ。」
と、子ども達はあわてて言う。
「そう、みんなはまちがえずに、ちゃんと読むんだよ。サンハイ。」
「たんぽぽ」
と、子どもたちは正確に読む。うれしそうに、自信をもって。
教師は、筆者名もまちがえて読む。
「ひらかわ かずこ」
子ども達は、にっこりしながら
「ひらやま かずこ」
と、読む。うれしそうに、自信をもって。
教師は、すました顔で、更にまちがい続ける。
「たんぽぽは、ひよわな草です。」
子ども達は、くすくす笑いながら正確によむ。
「たんぽぽは、じょうぶな草です。」
教師は、とぼけた調子で先を読む。
子ども達は、教師のまちがいを見逃すまいと、集中して教科書の文を目で追っている。
「 はがふまれたり、つみとられたりしたら、もう生えてきません。」
子ども達は、教師のまちがいを正さずにはおくものかという勢いで、声を大きくして読む。
「はがふまれたり、つみとられたりしても、また生えてきます。」
わざとまちがえて読んでみせることの効用は、次の2点である。
@どの子も教材文に集中する。
A正確に読もうとする意識が強まる。
教師のまちがえ方のポイントは、次の3点である。
@子ども達の意表をつくこと。
Aまちがえるのは、一文につき一カ所だけに限定すること。
B淡々と、すました顔で、まちがい続けること。
通読がすみ、ある程度読めるようになってから、試みるとよい方法である。
補教に行った一年生のクラスで、子ども達に仕掛けてみた。
初めて出会った子ども達が、集中して楽しそうに読んだ。
「おもしろかった。」
「また、やりたいな。」
という声を聞くことができた。
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