この「算数テスト100点獲得」の直後、M君自身も驚き、私も大変驚いた出来事がある。
M君が、初めて表も裏も100点を取ったのが1時間目のことだった。その日の3時間目のことである。国語で詩の学習をしていて討論になった。その時、少数派の一員として論陣を張ったのが、何とM君であった。これまた、初めてのことであった。他の子達も「M君、すげえ!」と驚く発言ぶりだった。その日の日記にM君は、こう書いた。
今日はぜっこうちょうだった。算数では表も裏も100点がとれるし、国語でもいっぱい意見が言えた。なんで、あんなに意見が言えたのかふしぎだ。」
「初めての100点」の後、M君は、もう2回も100点を達成している。
B保護者の声
通知票の「家庭から学校へ」欄に書かれたM君の保護者の声を紹介する。
★夏休みの宿題も進んで行うことができて、家の中でも最高学年という自覚が見えてきました。二学期もよろしくお願いします。
★進んで机に向かうようになり、「やる気」がとても感じられました。この「やる気」をつぶさないように回りの協力を惜しまずにバックアップしていきたいと思います。三学期もよろしくお願いします。
(4)成功体験が生む自信
私の目の前で変容していったM君の姿を見て、次のことを実感した。
成功体験は、子どもに自信を与える。
自信を持つと、子どもは自ら努力ができるようになる。
ひとつのことで得た自信は、他のことでも自信を持つことにつながる。
そして、教師としての私の役割について、こう考えた。
子どもに自信を持たせるための「目に見える事実」を作り出そう。
子どもに自信を持たせることは、「生きる力」を育てることにつながるのだから。
M君は100点を取る以前から、進歩していた。漢字にしても算数にしても、少しずつ学習の仕方を身につけ、少しずつ力を蓄えていたのだ。担任からの「進歩しているよ」というほめ言葉も聞いている。
しかし、それらはM君に確たる自信を持たせる力は持たなかった。
M君に確たる自信を持たせる力を発揮したのは、「100点を取った」という
「体験」であった。
(5)中学生になっても生きた自信
成功体験を積み重ね卒業していった子達から、メールやFAXが届いた。
どれも、中学校での学習や部活に前向きに取り組んでいることが分かる内容だった。
共通していたのは「やればできる」という自信が彼等のやる気を後押ししているということであった。
以下に、その文面のいくつかを抜粋で紹介する。
先生に知らせることがあります。僕は何と、とても重要な学級委員になりました。
僕は小学校で代表委員とかもやったことがないので、正直できるかどうか不安です。
でも、自分を変えるチャンスかも知れないので頑張ってみます。
漢字テストや算数のテストで自信をつけ卒業していったM君からのメールである。
そのMから数日後、次のようなメールが届いた。
学級委員の仕事、もちろん頑張ります。浅川先生から受け継いだ「やればできる」
この言葉を学級目標に出しました。サッカーも頑張ります。
二重とびが最後の最後にできた子からは、次のようなFAXが届いた。
先生が何よりいちばん大切なことを教えてくれたのは、“やればできる”です。
私が2年間練習して、なかなかできなかったもの、それは二重とび!
5年生の時は全然練習しませんでした。みんな次々にできるようになり6年生。残ったのは、とうとう私1人。
あせった私は先生が何回もしつこくうるさいほど言った言葉を思い出しました。 “やればできる”1ヶ月頑張ったら2回が5回に、10回が25回に、今は35回もとべます。
勉強でも何でも人間やればできるのさ!合い言葉は“やればできる!”
自分の弱さと向き合い、クラスの中にあった差別とたたかい、成長していった子からは、次のようなメールが届いた。
僕は、バレーボールクラブに入りました。バレー部は超超超超厳しい部活です。でも、僕はそんな厳しい部活に入ります。学級員の委員長にもなりました。
こんな勇気が出るのも、心が強くなれたのも、先生の教えてくれたことがあったからです。本当に感謝しています。
いま、とても勉強が楽です。これはずっと続けてきた自学ノートのおかげです。
「努力の壺」はすごいなあ!
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