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第2回五色百人一首大会 私が伝えたいこのドラマ
講評にドラマを織込む

浅川 清(TOSS相模原)

 第2回神奈川県五色百人一首大会は、予選と本戦に分けて開催することになった。予選大会は、北会場と南会場の二カ所で行った。北会場の予選大会で、最後の「講評」の担当になった。「好評を得る講評にするには?」と、ない知恵を絞った。

 これだけはクリアーしようと決めたことが3つある。

1.負けた子が、全力を尽くして戦ったことに誇りを持てるようにする。
2.その会場でしか、できない話にする。(どこでも話せる内容にはしない)
3.エピソードで語る。

1.取材する

(1)ロビーで練習していた親子

 「どんな講評をしようか」とドキドキしながら会場に入った。スタッフの打ち合わせの途中、ロビーに出た私の目に飛び込んできた親子がいた。開会の2時間前である。

 ロビーに置かれた長椅子の上に、小さな男の子が正座している。向かいには、それより少し年長らしき女の子が座っている。二人の間には、五色百人一首の札が並べられ、二人の母親らしき人が札を詠んでいる。男の子は、真剣な表情で素早く手を伸ばしている。女の子はニコニコしながら試合を楽しんでいる。1試合が終わったらしく、男の子がガッツポーズをしている。また札が並べられ、今度は父親らしき人が詠み手を努めている。家族が一体となって練習している姿は美しかった。

 後で、その男の子は、事務局長の鈴木氏のクラスの子だと分かった。五色百人一首をきっかけに大きく伸びた子だという。家族全体で応援してくれているのだという。

 このエピソード、いただき!

(2)車椅子で我が子の応援にかけつけたお父さん

 予選大会の会場に向かう車中である。事務局長の鈴木氏の携帯が鳴った。鈴木氏のクラスの子のお父さんからである。「車椅子であるが、どうしても応援に行きたい」という連絡だった。「ぜひ、来てください」と即答し、対応のための手配をした。まず、そのお父さん専属のスタッフを決めた。川崎から応援に来てくれていた桜井氏に頼むことにした。桜井氏は快諾してくれた。会場に着いてから、車椅子用の駐車場の位置、スロープの有無を確かめた。大丈夫だった。桜井氏には、車椅子で進むコースの下見をしてもらった。

 このことも、さり気なく話そう!

(3)参加した子ども達の表情

 玄関から入ってくる子ども達の表情。晴れやかだ。期待感に満ちている。

 試合会場に入ってくる子ども達の表情。緊張している。闘志に満ちている。

 試合中の子ども達の真剣な眼差し。一瞬で札を取る集中力。

 どの子も、いい顔をしている。挑戦者の顔だ。これも、講評で話そうっと!


2.組み立てる

 色別大会だから、3回(緑、青と桃、橙と黄)の閉会式がある。講評も3回である。大会は生きている。講評も生きていなければならない。その時、その場に合ったことを話そうと決めた。試合の進行を見守りながら、ノートに講評メモを書いた。何度も書き直した。

 これは1分間の授業だと思って、子ども達の前に立った。子ども達一人一人と視線が合うように心がけて話した。 


3.講評(3回分)


(笑顔で、子ども達全体に視線を配りながら)お疲れ様でした。疲れたでしょう?すごく緊張したもんね。(間)皆さんは、今日、この会場に入って来た時から、「やるぞ!」という、いい顔をしていました。試合中の、札を見つめる真剣な目、一瞬で札を取る集中力、とってもかっこよかったです。試合が始まる前には、こんなこともありました。ロビーでね、お姉ちゃん相手に練習している男の子がいたんです。お父さんとお母さんが交代で札を読んでね。美しい家族の姿でした。(間)今日、ここでみなさんは、素晴らしい出会いを体験できました。それは、一生懸命と一生懸命の出会いです。一生懸命練習してきた友達、一生懸命応援してくれたお父さんお母さん、一生懸命準備してくれたスタッフの先生達、3つの一生懸命の出会いです。(間)3つの一生懸命を出会わせてくれたものは、美しい美しい日本語、百人一首でした。 来年もまた、お会いしましょう!

 お疲れさま、緊張したでしょう?教室で普段やっている試合の2倍も3倍も緊張したでしょう。この緊張をくぐり抜けたみなさんは、確実に、試合前よりたくましくなったはずです。(間)会場に入ってきた時の、みなさんの目は、やる気いっぱいでキラキラしていました。ルール説明の時は、前のめりになって真剣に画面を見ていましたね。緊張感いっぱいのこの時間は、みなさんを成長させる時間でした。(間)足が悪くても参加した子がいました。勝った子と手を取り合うお母さん、負けた子を笑顔で抱きしめるお母さんがいました。車椅子で応援にかけつけたお父さんもいました。
たくさんの美しいものが、今日、この会場で出会いました。その出会いを作ったのは、千年を生き続けてきた美しい美しい日本語、百人一首でした。(後略)

 ここは柔道場です。勝つか負けるかの柔道の真剣勝負が行われる場所です。その柔道場で、たった今みなさんは、3分間の真剣勝負をしたのです。(間)決勝戦の最後の最後の勝負、見ましたか?あの時、△△さんが「勝ちたい!絶対勝つ!」と言ったのが聞こえました。その後の試合、ものすごい緊張感でしたね。(間)真剣な3分間、それは必ずみなさんを成長させます。強くさせます。(間)選手宣誓で「百人一首のおかげで集中力がついた。自信がついた。」といった○○さんの言葉通りです。
(3枚の百人一首の札を取りだし)では最後にみなさんで百人一首を詠んでみましょう。久かたの〜(ここまで詠めば、続けて子ども達の声が出る。さすがに大会に出てくる子達だけのことはある)光のどけき春の日に〜しづ心なく花のちるらむ〜(と、ここまでは普通に詠む)相模原〜わきて流るる相模川〜(「あれ?」という反応があるので、「そういうのもあるんですよ〜」と、詠む口調のままで、とぼける)いつみきとてか〜恋しかるらむ〜(子ども達は、笑いながら唱和してくれる)瀬をはやみ〜岩にせかるる瀧川の〜負けても次に逢はむとぞ思ふ〜また来年お会いしましょう!

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