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学芸会脚本
〜二重とびができたら〜

浅川 清(TOSS相模原)

 この劇は、宮川ひろ作の「びゅんびゅんごまがまわったら」という絵本を脚色したものである。劇の前半は、絵本の絵(OHPで舞台奥の壁に投影する)とナレーションを組み合わせた形で進め、後半を普通の劇の形にする。この方が、ストーリーが分かりやすくなるし、時間短縮にもなるし、舞台に変化が生まれるしでメリットは多い。
以下に、手順を示す。

手順1・OHPで投影する絵を、TPシートにコピーする。
手順2・油性ペンで彩色する。
手順3・枠に貼り、投影順に番号を書いておく。
手順4・厚紙を錠前の形に切り抜いた物も作っておく。
手順5・タイトル用のTPシートも、作っておく。

 使う絵は、次の5枚である。
TP@大勢の子がアスレチックで遊んでいる絵
TPAこうすけが一本橋を渡っている絵
TPBこうすけが一本橋から落ちた絵
TPCこうすけが担架で運ばれていく絵
TPD再びアスレチックで遊ぶ子ども達の絵

ナレーター さくら小学校には、運動場に続く
広いアスレチックがあります。
子どもたちはみんな、このアスレ
チックが大好きでした。2年生の
中で、いちばん早く一本橋が渡れ
たのは、こうすけでした。
(OHPで、TP@の絵を、舞台
奥の壁に投影する)
ナレーター
3学期になって霜の深い朝のこと
です。
「こんな橋、けんけんだって渡れ
らあ!」
こうすけ
は調子よく渡り始めたの
ですが・・・。
(TPシートAの絵を投影する)
ナレーター
「あっ!」
(パッとTPシートBの絵にする)
こうすけ
は、すべって骨を折って
しまいました。一本橋は霜でこお
っていたのです。
入院して手術しました。
(効果音として救急車のサイレン
の音を流す)
ナレーター
アスレチックには、その時から大
きなカギがかけられて、入ること
もできません。
(「かけられて」に合わせて「ガ
チャッ」という効果音を入れる)
(厚紙で作っておいた錠前を、
OHPの台に乗せて投影し、
「かけられて」に合わせて、厚紙
を動かす)
ナレーター
春になりました。
こうすけ
も元気になって2年生で
す。校長先生もかわりました。
でも、アスレチックのカギは、
かけられたままです。
(タイトルを投影する)
ナレーター
「カギのかかったアスレチック」
2年1組
たかひろ
  こうすけ、おまえのせいだぞ。
  おまえのせいで・・・。
みつお
アスレチックで遊べなくなっちま
ったんだぞ。どうしてくれるんだ
よ。
こうすけ
(だまってくちびるをかんでいる)
くによ
ちょっと、そんなこと言ったって
しょうがないでしょ。
ともこ そうよ。それよりも、何とかして
カギを開けてもらうことを考えよ
うよ。
たかひろ
カギを開けてもらうって・・・
どうやって?
ともこ どうやって開けてもらうか、それ
を考えるのよ。
みつお
う〜ん、むずかしいなあ・・・。
(5人、考えこむ)
校長先生
(黒子が支えている窓から顔をの
ぞかせて、空の様子をながめてい
る)
こうすけ
(窓の方へかけより)校長先生!
あの、あの・・・アスレチックの
カギを開けてください!
(こうすけの後ろから)
くによ
お願いします!
(たかひろ、みつお、ともこも頭
を下げる)
(窓の向こうから、ゆっくり舞台
校長先生
前方へ出てきながら)
アスレチックのカギを開けてくだ
さいか・・・。う〜ん、開けてあ
げてもいいけれど・・・(と、も
ったいぶりながら)ただで開けて
あげるわけにはいかないよ。
たかひろ
どうすればいいんですか。教えて
ください。
校長先生
よし、じゃあ、これができるかな?
(黒子から竹馬を受け取り、乗っ
て歩いて見せる)
(5人、思わず拍手)
校長先生
これができるようになったら、君
達のたのみも聞いてあげることに
しよう。
こうすけ
本当ですか?
(校長先生、大きくうなずく)
みつお
じゃあ、ぼくがんばります!
くによ
わたしも!
たかひろ
ぼくも!
(校長先生、満足そうに窓の後ろ
へ退場)
(黒子も窓を持って退場)
みつお
よし、さっそく今日からやろうぜ。
ともこ いいわ。
じゃあ、さっそく行動開始!
(5人、元気よく退場)
ナレーター
アスレチックのカギを開けてもら
うために、さっそくその日から、
こうすけ
たちの練習が始まりまし
た。
ともこ (竹馬を“持って”舞台を横切る)
みつお
(2,3歩乗ったら、すぐおりて
歩き、また2,3歩のったらおり、
という調子で舞台を横切る)
【竹馬には、すべり止めをつけて
おく】
たかひろ
(5,6歩竹馬に乗って歩き、後
は下りて歩きながら退場)
こうすけ
あぶなっかしい乗り方ながら、ず
っと竹馬に乗ったまま、舞台を横
切る。
みつよ
(竹馬を引きずって舞台を横切り
ながら)きのうより、竹馬が軽く
なったわ。すごい進歩だわ!
ナレーター
5人の真剣な練習は、次の日も続
けられました。
ともこ (2,3歩なら竹馬で歩けるよう
になって舞台を横切る)
みつお
(5,6歩なら竹馬で歩けるよう
になって舞台を横切る)
たかひろ
(あぶなっかしい乗り方ながら、
ずっと竹馬に乗ったまま、舞台を
横切る)
こうすけ
(よゆうたっぷりに、竹馬に乗っ
て舞台を横切る)
みつよ
(かた手で竹馬を持って舞台を横
切りながら)もう、わたしなんか
かた手で持てるもんね!
ナレーター
5人とも、真剣に練習していまし
たね。この調子なら、みんな乗れ
るようになるのも、まもなくでし
ょうね。
(黒子、窓を持って、舞台真ん中
に立つ)
ナレーター
一週間後のことです。こうすけ君
達が、張り切って校長先生のとこ
ろにやってきました。
(こうすけを先頭に子ども達登場
し、窓のところに歩み寄る)
こうすけ
校長先生!
(校長先生、窓から顔を出す)
たかひろ
ぼくたち、みんな竹馬に乗れるよ
うになりました。見てください。
(校長先生、窓の向こうから出て
くる)
(子どもたち、竹馬に乗って舞台
を回る)
みつお
どうですか?できたでしょう?
校長先生
うん、1つめはできたようだな。
ともこ 1つめって?・・・2つめもある
んですか?
校長先生
(うれしそうに笑いながら、うな
ずいて)あるとも。2つめは、こ
れだよ。(と言いながら、一輪車
に乗ってみせる)これだよ。でき
るかな?

たかひろ そんなの、ずるいですよ。ふたつ
めなんて。
校長先生
ほう、これは、できないんだね。
みつお
できますよ!できますけど・・・
校長先生
やっぱりできないんだ、なるほど。
こうすけ
できます!やってみせます!
くによ
わたしもやってみせます!
ともこ 待っててくださいね。校長先生。
校長先生
(うれしそうに、うなずきながら
窓の向こうへ退場)
(子どもたちも退場)
(黒子も窓を持って退場)
ナレーター
さあ、大変です。2つめの問題が
出てしまいました。でも、こうす
け君達は、負けずに挑戦するよう
ですよ。
(子ども達、一輪車を持って登場
し、練習し始めるが、なかなか
うまくいかない)
ナレーター
一輪車に乗るのは、なかなか難し
いようです。でも、こうすけ君達
は校長先生に負けたくありませ
ん。みんな、あきらめずに練習を
続けました。
(校長先生、薄い幕の間から顔を
出し、子ども達の練習を見守る)
ナレーター
おや、校長先生があんなところか
ら見ていますよ。
(子ども達、練習を続ける)
(いったん舞台を暗くし、5秒後
明るくする)
ナレーター
あれから2週間たちました。
(校長先生、ゆっくり登場)
(子ども達、一輪車を持って登場)
こうすけ
校長先生、見てください。
たかひろ
できるようになりました。
(5人、次々に一輪車に乗ってみ
せる)
みつお
どうですか?
校長先生
(大きく、うなずく)
くによ
合格ですか?
校長先生
うん、2つめはな。
ともこ 2つめはって・・・3つめもある
んですか?
校長先生
(うれしそうに大きくうなずく)
(子ども達、顔を見合わせて、た
め息をつく)
こうすけ
(やけ気味に顔を上げ)次は何で
すか。次の問題を出してください。
校長先生
次はこれだよ。(と言いながら、
二重とびをしてみせ、うれしそう
に退場)
ナレーター
校長先生は、とても楽しそうです
が、こうすけ君達は、ため息をつ
いています。
こうすけ
(決心したように)よし、やるし
かない!ぼくはやるよ!
ともこ わたしは自信がないわ。
くによ
わたしもよ。今度のは無理よ。
わたし、もう、いちぬ〜けた!
(くによ、怒った顔で退場)
みつお
(くによを見送り)あ〜あ、行っ
ちゃった。だけど、校長先生って
本当に意地悪だよ。こんなにむず
かしい問題ばっかり出して。
たかひろ
きっと、生まれた時から、こ〜ん
な顔してたんだぜ。(と言いつつ
しかめっ面をつくる)
みつお
ようし、こうなったら二重とびが
できるようになってやろうぜ。
そうしたら、こ〜んな顔が(と、
しかめっ面をつくる)こ〜んな顔
に(と、おどろいた顔をつくる)
なるぜ。
たかひろ
おもしろい!校長先生の、こ〜ん
な顔を(と、大げさにおどろいた
顔をつくる)見てやろうぜ!
こうすけ
やってくれるか?
ともこ うん!わたしものっちゃう!
(練習する4人を、順にスポット
が追う)
ナレーター
4人は熱心に練習を続けました。
でも、二重とびはむずかしく、な
かなかできません。2週間がたち
ました。
たかひろ
やっぱりだめだ。
みつお
むずかしいな。
たかひろ
このままじゃ、校長先生に負けて
しまう。
くによ
(二人の前を、けん玉をしながら
通りすぎる)
みつお
そうだ!けん玉だ!けん玉で校長
先生を負かしてやろうよ!
ともこ そうね!それはいい考えよ!
けん玉なら、わたしも得意よ。校
長先生には負けないわ。
こうすけ
ぼくは二重とびの練習、(きっぱ
りと)続けるよ。
たかひろ
うん、こうすけは、二重とび、が
んばれ!おまえなら、できそうだ。
(4人、それぞれに練習を始める。
くによ
も出てきて、けん玉の練習
をする)
校長先生
(5人の後ろを通って、うれしそ
うに練習を見ていく)
(校長先生をスポットが追う)
ナレーター
夕方、校長先生が、子ども達の練
習ぶりを見ていきました。何だか
うれしそうでしたよ。
(いったん舞台を暗くし、5秒後
明るくする)
ナレーター
あれから、また1週間たちました。
(くによが、校長先生の手を引い
て、こうすけ達のところへ連れて
来る)
くによ
校長先生、見てください。
こうすけ
(二重とびをやってみせ、ガッツ
ポーズをして)どうですか?
校長先生
よろしい。合格!
こうすけ
では、アスレチックのカギを開け
てください。
子ども達
開けてください!
校長先生
あぶない遊びはしないと約束でき
ますか?
子ども達
約束します!
校長先生
よろしい。では、開けてあげまし
ょう。
子ども達
やったあ!
こうすけ
お祝いに、いつもよりたくさんと
びます!(二重とびをしてみせる)
くによ
校長先生、これできますか?
(こうすけが二重とびをする周り
で、くによ達、得意げに、けん玉
をしてみせる)
(いったん舞台を暗くし、薄い幕
も開けてから、明るくする)
ナレーター
こうして、アスレチックのカギは
ようやく開けられました。
(OHPで、カギが開く動きを、
投影して見せる)
ナレーター
アスレチックのカギが開いた後も
桜小学校では、竹馬も(クラスの
中で竹馬のできる子は全員、竹馬
に乗って舞台を横切る)一輪車も
(一輪車に乗れる子は全員、一輪
車に乗って舞台を横切る)二重と
びも(二重とびができる子は全員、
舞台に出て二重とびをする)けん
玉も( けん玉ができる子は全員、
舞台に出てけん玉をする)大流行
したそうです。

    〜フィナーレ〜
BGMを流し、全員、舞台に並び
右手を上げて、右方に礼。
左手を上げて左方に礼。
両手を上げて正面に礼。

指導のポイント

1.役を決めるのはオーディションで
 なぜ、オーディションなのか?これをすると、配役が決まった時点で、演技が八割方できてしまうからである。オーディションで、やりたい役を勝ち取るために、子ども達は
○台詞を覚えてくるし
○届く声を出そうとするし
○台詞の言い方を工夫するし
○動作を工夫したりするからである。


2.オーディションの手順
(1)本番1ヶ月前には、台本を配る。   
(2)オーディションのやり方と、いつやるかを教える。
(3)オーディションをする。
  希望者が多い役から、決めていく。
  何回、立候補してもよいことにする。
 @届く声で決める。
 「こうすけ」の役に立候補した子が10人いたとする。10人全部を体育館の舞台の上に立たせ、
  教師は体育館の最後方に立つ。短い台詞を言わせ、教師の所まで声が届いたら、第一次関門突破とする。
 A台詞の言い方で決める。
   第一次関門を突破した子を集め、少し長い台詞を言わせる。台詞の言い方が自然で、
   はっきり聞き取れる子を、第二次関門突破とする。
 B動作で決める。
   第二次関門を突破した子を集め、台詞に合った動作を要求する。より自然な動作ができた子を
   「こうすけ」役に決める。

3.個別評定で演技を磨く
@届く声で台詞が言えたか。
A自然な話し方で台詞が言えたか。
B台詞に合った動作・表情ができたか。
C台詞のない時の演技ができているか。
D視線の演技ができているか。
E間(マ)の演技ができているか。


 上記のようなポイントを決め、個別評定を重ねる。「体育館の後ろまで声が届いた。5点!」「台詞がない時も動きを工夫していた。8点」 のように。「1回の個別評定で、1つのポイントを、全員クリアー」を原則に進める。本番前には、どの子も「合格した!」という自信をもって舞台に立てるようにするためである。

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