みんなの前で、憶せずに話せる。
こんな当たり前のことができる力を、どの子にも、つけてやりたい。
1.一人一言
新しいクラスを受け持つと、まずこれをする。話す場数を増やすのである。
ひとりひとりの運動量を確保することが体育の絶対条件であるように、話す力をつけたいのなら、
話す場数を増やすことが絶対条件であると考えている。
@朝の一人一言
朝の健康観察の返事の代わりに一人一言
を要求する。
「今日は、どのくらい元気かを言って下さい。
『○○○くらい元気です』という形で言うんだよ。思いついた人、起立。」
「逆立ちができるくらい元気です。」
「大声で笑っちゃうくらい元気です。」
「五百メートル走れるくらい元気です。」
自力で言える子に先に話させ、真似をしてもOKとする。易から難へとハードルを上げていく。
A授業中にも一人一言
ここぞという場面では、授業中にも一人一言を要求する。これも易から難へと進む。
2.大声対決
一人一言で、子ども達が多少人前で話す
ことに慣れてきたら、これを行う。
@子ども達を2つのチームに分ける。窓側 チーム対廊下側チームなどとする。
A大声で言う言葉を提示する。
「私は天才!」「僕はかっこいい!」
など、プラスのイメージを持つ言葉にする。
B各チームの先頭の子を立たせ、
「では、大声対決です」
と厳かに宣言する。
「Aさん、どうぞ!」
Aさんは戸惑いながらも、
「・・・私は天才」
と大きめの声で言う。
「では、B君どうぞ」
B君はAさんに負けてたまるかと、Aさんよりは大きな声で言う。
「僕はかっこいい」
Cすかさず、判定する。
「この勝負、B君の勝ち!」
迷いを見せず、きっぱりと断定する。
これで、教室の空気が変わる。
「ようし、勝ってやるぞ!」という気持ちに火が着く。
D次の二人を指名し、立たせる。間違いなく最初の二人より、気合いが入っている。立ち方にも勢いがある。
「私は天才!」
女の子が声を張り上げれば、負けじと男の子が叫ぶ。
「僕はかっこいい!」
こうなれば、しめたものである。両足を踏ん張り、思い切り息を吸って声を出そうとする男の子。
顔を紅潮させながら、みんながのけぞる(?)ほどの迫力ある声を出す女の子。丁々発止の闘いが続く。
大声対決が終わったときには、「自己防衛の鎧」を、確実に一枚は脱ぎ去った子ども達がそこにいる。
「憶せず、みんなの前で話せる子」への第一歩である。 |