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教師が教えなくて誰がする 
「かわいいね、雑誌のモデルにならない?」
子ども達のすぐ身近に迫ってきている
性被害を授業する

浅川 清(TOSS相模原)

 

 サークルの夏合宿に提出された瀧尾レポート(「山登り」9月号・P22〜26参照)をもとに、2学期最初の授業参観日に授業をした。6年生のクラスである。事前に「保護者にも、一緒に考えてほしいテーマで授業をする」旨を学級通信で伝えておいた。

 授業が進むにつれ参観者が増え、廊下までいっぱいになっていくのが分かった。保護者にとっても関心の高いテーマだったことが伺える。以下に授業の様子を示す。

1.「モデルにならない?」と声をかけられたらどうするか問いかける

 最初に、OHCを使って、ティーンズ雑誌2冊を見せた。表紙→中身の順で見せていった。どのページにも、クラスの子ども達と同じか、ほんの少し年長の子ども達が、たくさんモデルとして登場していることに気づかせた。

 次に、この子達が、どのような経過をたどってモデルになったのかを予想させた。

○応募した。 ○スカウトされた。 ○オーディションを受けた。

などの答えが返ってきた。では、自分がスカウトされたら?「モデルにならない?」と声をかけられたら?・・・どうするかを考えさせた。

○うれしくて、すぐ引き受ける。 ○親に相談してから決める。
○恥ずかしいから断る。 ○興味ないから断る。

2.「実話」を読んで聞かせる

 瀧尾レポートにある「お話・1」(「山登り」9月号・P26参照)を読んで聞かせた。実は、この話は瀧尾氏の「創作」である。主人公を小学校6年生という設定にし、場所も子ども達にとって最も身近な「町田」とし、いかにもありそうな展開にして、授業しやすくまとめてある。私の勤務校の子ども達にとっても、「町田」は身近な場所であり、「どこか遠い所」ではないのである。 

 「お話・1」は、次のようなポイントを押さえて創られている。

@主人公も場所も、子ども達が「身近なもの」と受け取る設定。
A友達と一緒(3人連れ)だった。
B寄り道して歩いていた時の出来事だった。
C声をかけてきたのは「素敵なお姉さん」だった。
D「かわいい」を連発された。
E「街頭で、そのままの姿で」写真を撮るだけだった。
F少額ではあるが「報酬」を受け取った。
Gその「報酬」を使ってしまった。
H「次回のチャンス」を知らされた。

 この「お話・1」を読み聞かせたあたりから、子ども達が授業に集中してきたのが分かった。他人事ではなく、自分達の問題として受け止め始めたという感触があった。

3.主人公の行動の「なぜ?」を考えさせる

 まず、「なぜ写真を撮らせてしまったのか?」を考えさせた。子ども達が理由として挙げたのは、上記のポイントのACDEだった。

罠・1  初めに「これなら安心だ」と思わせる。

 ここで、「友達と一緒だから」「これくらいなら」と安心させる手口を確認した。

 次に、「この日のことを親に話したか?」と問う。子ども達は首をふる。「内緒にすると思う」という。なぜか?・・・理由として、上記のポイントの中のBFGが挙げられた。

罠・2  「報酬」で釣り、親に話せない秘密を作らせる。

 ここで、「秘密」ができてしまったことを確認した。

「主人公達は、また、あのお姉さんに会える場所に行ったか?」という問いには、大多数の子達が「行くと思う」と答えた。「では続きを読みます」と、「お話・2」を読み聞かせた。「お話・2」のポイントは次のとおりである。

@友達と一緒に行った。
A「素敵なお姉さん」に、「ほめ上手なお兄さん」が加わっていた。
B「街頭でそのままの姿で」ではなく、「ワゴン車の中で着替えて」から写真を撮ることになった。
C「写真は外で撮るから」と言われ、安心して着替えた。
D「報酬」は、「ブランド物のかわいい洋服」に格上げされた。
E受け取った「報酬」は、隠しておくことになった。

4.どんな現実があるのかを知らせる

 このあと、瀧尾レポートに添って「どんな現実があるのか?」「身近でどんな被害が起きているのか?」という情報を提示した。 

○車の中での着替えを盗み撮りされた。
○撮られた写真が少女売春のチラシや出会い系のサイトで悪用された。
○お菓子と偽り、麻薬を食べさせられた。
○渋谷の監禁事件。

罠・3  少しずつエスカレートさせ、次第に深みにはまらせる。

5.保護者会で

 授業参観後の保護者会では、保護者の感想を聞いた。

○タイムリーだった。こういう授業が必要だ。
○「まだ、自分の子は幼いから」と安心していたが、他人事ではないと思った。
○行き着くところに何が待っているのかを、はっきりと具体的に(性交渉の強要までを含めて)教えなければ、予防にはならないのではないか。

6.授業をしてみて

 サークルで瀧尾レポートを検討した後、「女の子達が『ああいうふうになりたい!』という強い憧れをもって生きるようにしなければ、本当の解決にはならないね」という話になった。授業をしてみて、ますますその感を深めた。「女性の生き方のモデルを示せる」授業開発という課題が残った。

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