(C)インターネットランド /小学校/5年生/学芸会脚本/

学芸会脚本
〜挑戦〜

浅川 清(TOSS相模原)

 この劇の登場人物には、固有名詞がついていない役が多い。それぞれの立場によって、「挑戦者@〜E」、「名人@〜E」、「応援団@〜B」、「天の邪鬼@〜B」、「表現隊」「黒子@〜B」などと表記してある。クラスの人数に合わせて、それぞれの役割の人数を増減しよう。

   プロローグ
応援団@ がんばれ がんばれ
応援団A ファイト ファイト
応援団B 負けるな 負けるな
( 応援団の呼びかけに合わせて
「表現隊」は“応援する気持ち”
を表現運動で表す)
天の邪鬼@いいよ いいよ
どうでもいいよ
天の邪鬼A適当に適当に
天の邪鬼Bムダな努力はやめようよ
(天の邪鬼の呼びかけに合わせて
表現隊は、“投げやりな気持ち”
を表現運動で表す)
応援団@ やってみなきゃ わからない
応援団A やってみようよ 精いっぱい
( 応援団の呼びかけに合わせて
表現隊は、“励ます気持ち”を表
現運動で表す)
天の邪鬼@どうせ だめさ
天の邪鬼Aできっこないさ
天の邪鬼Bさっさと あきらめなよ
(呼びかけに合わせて表現隊は、
“馬鹿にする気持ち”を表現運動
で表す)
応援団@ なにを!
天の邪鬼@なんだよ!
応援団A なにを!
天の邪鬼Aなんだよ!
ナレーター人の心は いろいろです。
がんばる心 怠ける心
入りまじって 大揺れです。

   場面・1
ナレーター昔、昔のお話です。
黒子、3人がかりで地蔵役の子
をかついで出る。舞台中央に地蔵
役の子をおろし、やれやれという
ように、額の汗をぬぐって退場)
ナレーター村はずれのお地蔵様の所にうさぎ
がやってきました。
うさぎ (お地蔵様に向かって)私に速い
足を下さってありがとうございま
す。おかげ様で、毎日楽しく暮ら
しています。
お地蔵様はい。(ニコニコしてうなずく)
ナレーターそこへ、きつねがやってきまし
た。
きつね (お地蔵様に向かって)私に賢い
頭を下さってありがとうございま
す。
お地蔵様 はい。(ニコニコしてうなずく)
きつね でも、私はうさぎさんのような速
い足もほしいのです。
お地蔵様 えっ!(と、表情を変える)
きつね どうか速い足も、私に下さい。
お地蔵様 うさぎ君には速い足をあげ、き
つね君には、賢い頭を上げたので
す。両方、ほしいなんて欲張りで
す。
レポーター(マイクを持って客席に向かい)
さて、みなさん、みなさんなら、
きつねさんとお地蔵様のどちらに
賛成しますか?自分のこととして
考えてみて下さい。(間をおく)
では、お地蔵様に賛成の人?
きつねさんに賛成の人?
(挑戦者@〜E、客席の最前列に
いて、元気よく手を挙げる)
レポーターおっ、きつね君に賛成の人もいま
した。そこの6人のお友達、こち
らへ来て下さい。
(挑戦者の@〜E、舞台に上がる)
君達は、どうして欲張りなきつね
さんに賛成なんですか。
挑戦者@ ぼくは、算数は得意中の得意なん
だけど、跳び箱がちっとも跳べな
くて・・・上手な友達を見ると、
うらやましくて・・・ぼくもあん
なふうに跳べたらいいなと、いつ
も思ってるんです。だからきつね
さんの気持ちが、よく分かります。
(きつね、うれしそうに、うなず
く。お地蔵様は、顔をしかめる)
挑戦者A ぼくは、跳び箱は得意です。でも、
算数が大の苦手です。まだテスト
で百点を取ったことがありませ
ん。百点が取れたらうれしいだろ
うなと思います。だから、きつね
さんに賛成です。
(きつね、ますます、うれしそう
に大きくうなずく。お地蔵様、「う
〜ん」と考えこむ)
挑戦者B ぼくは、二重とびができるように
なりたい!         
挑戦者C 私は暗唱のチャンピオンになりた
い! 
挑戦者D 私はリコーダー名人になりたい!
挑戦者E 私はダンスの名手!
お地蔵様 (しゃがみこんで、いじける)
挑戦者@ なりたい なりたい!
挑戦者A もっと上手に!
挑戦者B もっと賢く!
挑戦者C もっと速く!
挑戦者D つけたい つけたい!
挑戦者E いろんな力を!
黒子@〜B(お地蔵様をかついで退場)
(うさぎも、きつねも退場)
天の邪鬼@やめろよ やめろよ ムダなこと
天の邪鬼Aそんな無理せず
天の邪鬼B気楽に行こうよ
(天の邪鬼の呼びかけに合わせて
表現隊の表現運動)
応援団@ やめるな やめるな
応援団A がんばってみろよ
応援団B やってみなきゃ わからない
応援団・全チャレンジ チャレンジ 
ゴー、ファイト!
(応援団の呼びかけに合わせて
現隊
の表現運動)  

     場面・2
黒子、とび箱をセットする)
応援団@ どのくらい、うまくなりたい?
挑戦者@ (名人@を指さして)あのくらい!
名人@ (とび箱の大技をやって見せる)
応援団A どのくらい、できるようになりた
い?
挑戦者A (名人Aを指さして)あのくらい!
名人A (大きなテストの束を持って登場
し)全部、百点です。
応援団B どのくらい、うまくなりたい?
挑戦者B (名人Bを指さして)あのくらい!
名人B (なわとびの高度な技をやって見
せる)
応援団C どのくらい、できるようになりた
     い?
挑戦者C (名人Cを指さして)あのくらい!
名人C すらすらと、よどみなく、暗唱し
てみせる。
応援団D どのくらい、うまくなりたい?
挑戦者D (名人Dを指さして)あのくらい!
名人D (リコーダーで、難しい曲を上手
に演奏してみせる)
応援団E どのくらい、うまくなりたい?
挑戦者E (名人Eを指さして)あのくらい!
名人E (ビートの利いた音楽に乗って、
鮮やかに踊ってみせる)
挑戦者@ さあ、大変だ。
挑戦者A がんばらなきゃ!
挑戦者B 一に練習
挑戦者C 二に練習
挑戦者D 三、四がなくて
挑戦者E 五に練習!
挑戦者の@〜E、それぞれの場で
練習を始める)
応援団@ 一に練習、二に練習、
応援団A 三、四がなくて、
応援団B 五に練習!
応援団・全チャレンジ チャレンジ
ゴー ファイト! 
(応援団の呼びかけに合わせて
表現隊は、舞台のはじで、応援を
する)
挑戦者・全(しばらく練習を続けた後、退場)

   場面・3
黒子、机と椅子をセットする)
挑戦者A (机に向かい、算数の教科書とノ
ートを前に、自分の頭をたたき)
だめだ、どうしても、できない。
やっぱり、ぼくには百点なんて無
理なのかなあ。(頭をかかえこむ)
挑戦者D (リコーダーを持って登場し、つ
っかえながら、曲Aを吹き)
ようし、ここまでは吹けたわ。


名人D (リコーダーを持って登場し、曲
Aをスラスラ吹いてみせ)
それでも吹いてるつもり?
(と言って去る)
挑戦者D (がっくりと肩を落とし)
まだまだ、こんなんじゃ、ダメな
のね。もう、あきらめようかしら。
(その場にすわりこむ)
挑戦者C (暗唱しながら登場し)
東海の〜、次は何だっけ?
名人C (舞台を横切りながら)
東海の〜小島の磯の白砂に〜
我、泣き濡れて蟹とたわむる〜
こんな、簡単なのも覚えられない
なんて、信じられない!
挑戦者C (がっくりと舞台の奥の壁にもた
れかかり) 
やっぱり、私には無理なのかなあ。
挑戦者E (ステップの練習をしながら登場
し)難しいわ、このステップ。
足がうまく動いてくれないわ。
名人E (軽やかにステップを踏んでみせ)
簡単よ、こんなステップ!
(と言って、去る)
挑戦者E (おおきなため息をついて)
私にはダンスの才能がないのかな
あ。こんなにダンスが好きなのに。
(と、立ちつくす)
挑戦者B (とびなわを持って登場し、二重
とびの練習をするが、うまくいか
ない)
むずかしいなあ、ずいぶん練習し
たのに、まだできない。
名人B (とびなわを持って登場し、軽〜
く二重とびをやってみせて)
軽いよ、こんなの!
(と言って、去る)
挑戦者B (とびなわを床にたたきつけて)
「軽いよ!」だって?
ばかにして!くやしい!
(床をたたいて、くやしがる)
挑戦者@ (とび箱の上に、とび乗り)
ここまでは、できるんだけどなあ。
名人@ (挑戦者@を、押しのけ)
あ〜あ、とび箱はとぶものだよ。
乗るものじゃないよ。見てな!
(鮮やかなフォームで大きくとん
でみせ、去る)
挑戦者@ 一所懸命、練習したって、この程
度だ・・・。もう、やめろって、
ことかなあ。
天の邪鬼@そうだ そうだ やめちまえ
天の邪鬼Aムダな努力はやめちまえ 
天の邪鬼Bどうせ、どうせ、できっこないさ
応援団@ 無理なんてとんでもない 
応援団A まだ、練習は始まったばかり
応援団B あきらめるなんて、早すぎる
応援団・全チャレンジ チャレンジ 
ゴー ファイト!
(表現隊、応援する)
応援団@ (挑戦者C、迷ったあげく、あき
らめて退場しようとする)
挑戦者E (挑戦者Cを引き止め)
あきらめちゃダメよ。
挑戦者C でも、ちっともうまくならないの。
挑戦者E (挑戦者Cに挑むように)
ちっとも?
全然? 
ほんの少しも?
挑戦者C ううん、ほんの少しは、、、
挑戦者E ほんの少しは、何?
挑戦者C (自信なさそうに口ごもりながら)
ほんの少しは・・・(間を取って
から、ハッと気づいたように)
うまくなった!
挑戦者E そうよ! うまくなったのよ!
(優しい調子で)ほんの少し。
挑戦者C (かみしめるように)ほんの少し。
黒子@、「少しはうまくなった」
と書いたプラカードを見せなが
ら、舞台を横切る)
黒子A、「小」と書いた2本の
プラカードを、かかげて登場)
挑戦者E (プラカードを指しながら)
これを2つ足すと?
挑戦者C これ!
黒子A、2本のプラカードを高
くかかげ、くっつけてみせる)
黒子B、更に2本の「小」と書
いたプラカードを、かかげて登場)
挑戦者E (プラカードを指し)
これを2つ足すと?
挑戦者C これ!
黒子AとB、4本のプラカード
を高くかかげ、くっつけてみせる)
黒子@とC、更に2本ずつ「小」
と書いたプラカードを、かかげて
登場)
挑戦者E (プラカードを指し)
これを2つ足すと?
挑戦者C これ!
黒子@とAとBとC、合計8本
のプラカードを高くかかげ、くっ
つけてみせる)
れ!(四本ずつ、全部で8本
っつける)
応援団@ ほんの小さなステップが
応援団A いくつもいくつも集まって
応援団B 大きな大きな進歩になります
黒子たち、「大きな」のところ
で、一斉にプラカードを裏返し、
「大」の字を作ってみせる)
応援団@ くじけちゃダメです。
応援団A 昨日の自分より
応援団B ほんの少し進歩した
応援団@ 自分になるために
応援団A 今日、思いっきりがんばるのです。
応援団B 今日のあなたが挑戦するのは
応援団@ 昨日までの、あなた
応援団A 明日のあなたが挑戦するのは
応援団B 今日のあなたです。
応援団@ さあ、練習をはじめるのです。
応援団・全チャレンジ チャレンジ
ゴー、ファイト!
応援団A 自分への挑戦は
応援団B 終わりのない挑戦
(挑戦者@〜E、それぞれの練習
を始める。しばらく練習してから、
全員退場)

    場面・4
ナレーター6人のチャレンジャー達の、努力
の成果を確かめる日が、やってき
ました。
ナレーター今日は、算数のテストが返され
る日です。
挑戦者A (百点と書かれた、大きなテス
ト用紙をかかげて登場し)
やったあ!やればできるもんだな
あ。ぼくの頭も、すてたもんじゃ
ないぞ!(と、退場)
(表現隊、以後、舞台の下から
鳴り物で、挑戦者達を讃える)
ナレーター今日は暗唱コンクールです。
挑戦者C (トロフィーを持って登場し)
やったあ!優勝しちゃった!
(朗々と暗唱をしながら、舞台を
ゆっくり回ってから退場)
ナレーター今日はリコーダー発表会です。
挑戦者D (高度な曲を見事に吹きこなし、
応援団や表現隊のアンコールを
受けて)私って、もしかして天才?
(と、つぶやきながら退場)
ナレーター今日は、なわとび発表会です。
挑戦者B (高度なとび方を披露してみせ)
やれば、できる!
(と、力強く宣言して退場)
ナレーター今日は、とび箱発表会です。
挑戦者@ (きれいなフォームの大技をや
ってみせ)ぼくは、昨日までの自
分に勝ちました。
挑戦者E おめでとう!
お祝いのダンスよ!
いっしょに踊りましょう!
(全員、出てきて、ビートの利い
た明るい曲に乗って踊る。挑戦者
E、踊りの輪の中心で、鮮やかに
踊ってみせる)

  フィナーレ
BGMを流し、全員、舞台に並び
右手を上げて、右方に礼。
左手を上げて左方に礼。
両手を上げて正面に礼。
   〜幕〜

指導のポイント

1.役を決めるのはオーディションで
 なぜ、オーディションなのか?これをすると、配役が決まった時点で、演技が八割方できてしまうからである。オーディションで、やりたい役を勝ち取るために、子ども達は
○台詞を覚えてくるし
○届く声を出そうとするし
○台詞の言い方を工夫するし
○動作を工夫したりするからである。


2.オーディションの手順
(1)本番1ヶ月前には、台本を配る。   
(2)オーディションのやり方と、いつやるかを教える。
(3)オーディションをする。
  希望者が多い役から、決めていく。
  何回、立候補してもよいことにする。
 @届く声で決める。
 「神様」の役に立候補した子が10人いたとする。10人全部を体育館の舞台の上に立たせ、
  教師は体育館の最後方に立つ。短い台詞を言わせ、教師の所まで声が届いたら、第一次関門突破とする。
 A台詞の言い方で決める。
   第一次関門を突破した子を集め、少し長い台詞を言わせる。台詞の言い方が自然で、
   はっきり聞き取れる子を、第二次関門突破とする。
 B動作で決める。
   第二次関門を突破した子を集め、台詞に合った動作を要求する。より自然な動作ができた子を
   「神様」役に決める。

3.個別評定で演技を磨く
@届く声で台詞が言えたか。
A自然な話し方で台詞が言えたか。
B台詞に合った動作・表情ができたか。
C台詞のない時の演技ができているか。
D視線の演技ができているか。
E間(マ)の演技ができているか。


 上記のようなポイントを決め、個別評定を重ねる。「体育館の後ろまで声が届いた。5点!」「台詞がない時も動きを工夫していた。8点」 のように。「1回の個別評定で、1つのポイントを、全員クリアー」を原則に進める。本番前には、どの子も「合格した!」という自信をもって舞台に立てるようにするためである。

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